これは去年の話なんだけど…
仕事が終わってすぐに隣の県まで車を走らせた。高速を使わないのはいつものパターンで約4時間の道のり…たった1本の封切初日の映画を観に行く為だけに…
1971年、ブラックムービー史上に残る歴史的な作品が生まれた。Melvin Van Peebles監督による『SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG』。インディペンデント作品としての興行記録を塗り替え、今も尚色あせる事無く語り継がれる伝説の作品ですよね。
あれから30年以上の年月が経ち、彼の息子であり現在俳優・監督として活躍するMario Van Peeblesが、このブラックムービーのマスターピースが出来上がるまでを1本の映画に仕上げたのが今夜ご紹介する鑑賞ほやほやの『BAADASSSSS!』です。

1970年に公開されたコメディ映画『THE WATERMELON MAN』が好評で、次回作は大手との契約が決まりかけていたMelvin Van Peebles。しかし彼はそれまで映画に登場するアフロアメリカンのイメージにウンザリしていた。召使、奴隷、暴力の矛先、道化師…、本当のアフロアメリカン映画を作りたい!本当のアフロアメリカンの現状を映画にしたい!彼は、1・黒人を勇敢に描く 2・あくまで娯楽作品に徹する 3・ビジネスとして成功させる 4・黒人が生活している町を舞台に描く…といったコンセプトを元に、1つの脚本を創り上げる。アフロアメリカンが無実の罪で警察に追われ、最終的に“逃げ切る”といった内容で、その時代の背景を考えれば恐ろしく過激で無謀なものだった。案の定、大手との契約は白紙になり、彼は様々な方法で資金提供者を探し回る。なんとかクランクインの目途が起った矢先、出資者が逮捕されてしまう…
感想から言おう!素晴らしい作品だった!全てが素晴らしかった!ここ何年か見たブラックムービーの中で製作法・映像・脚本・キャスト・音楽全てをとって最も“ブラックムービーらしいブラックムービ”だったとお世辞抜きに思う。
『SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG』の製作が、決してスムーズなものではなかったという事は、その後のインタビューや本などの記事でよく解かってた“つもり”だった。この作品でも描かれていたエピソードの幾つかは、よくご存知の人も多いかもしれない。ただ、文字で“知る”事と、映像で“感じ取る”事にこれほどまで感受性の部分で“差”がある事を改めて知った。それほど衝撃的だったしどこまでも生生しかった。
Melvin Van Peeblesは『SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG』が全てだったに違いない。何度と無く彼を襲う事件・問題、そしてその都度立ち消えになろうとする映画製作…これがフィクションなら奇跡的な幸運や、神がかり的な転機などが主人公をヘルプするのだが、あくまでこの作品は“ノンフィクション”、彼は自分の資材を投げ出し、借金を重ね、家族を犠牲にし、自らの体力の限界を無視してまでこの作品に“賭けた”。
文字にすれば簡単なものだが、わずか13歳でこの作品に出演し、濡れ場まで演じる事を強要されたMario Van Peeblesは、最も身近で最もシビアに最も悲しみ、そして最も喜びを共にしてきた息子らしく、この作品を創り上げた…というかこの作品は絶対彼にしか作れなかったという事を痛感した。映画の中には当時の息子から見た父親像が随所に渡って描かれてる。それは決して憧れや尊敬といった美しい賛歌だけではなく、鬼神のごとく命を自ら削るように映画に没頭する父に、信じられない要求や命令を拒否する事すら出来なかった子供心の葛藤なども多い。
俺がこの作品を見た劇場は、とっても小さな映画館で初日にもかかわらず観客は10人程度、ただ、エンドテロップと同時に映し出される実際の関係者の証言などは感慨深いものがあったし、最後の最後に5秒ぐらい登場した“ゴッドファーザー” Melvin Van Peeblesの姿を見た時は感極まった。全てが終わり館内が明るくなっても直ぐに立ち上がりたくは無かった。観客で号泣していたのが俺1人だったから(笑)。恥ずかしげも無く涙を拭う自分に「あ〜、俺はホントにHIPHOP、そしてブラックムービーといったブラックカルチャーが大好きなんだな〜!」と心の中で絶叫したよ。
家に帰って部屋に飾ってある『SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG』のオリジナルポスターを眺めた。フレームに入れてあるとはいえ当時の物なのでボロボロなんだけど、やっとの思いで手に入れたこのポスターは俺にとってこれ以上に無いくらいの“宝物”である。時間は深夜2時、どうしてもという衝動に駆られ、それから1時間半、『SWEET SWEETBACK'S BAADASSSSS SONG』を1人鑑賞したのは言うまでも無い(笑)
Melvin&Mario Van Peeblesに心からRESPECT!
そして、この作品を見た頃天国へ旅立ったOssie DavisにR.I.P テーマ:ブラックムービー(黒人映画) - ジャンル:映画
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