俺は一度だけ、とあるショットバーで全く見ず知らずの男に突っ込みを入れた事がある。 俺の予想では、その “エセ石田純一” 野郎は、きっと必死こいてクドいた女(太ってるときのレニー・ゼルウィガーに、のりたまを振りかけたような感じの真性カントリー娘系)を初デートに誘うミッションインポッジブルに成功し、まるで般若心経を米粒に写経することが出来るんじゃね〜のってくらいの集中力でHOTDOGプレスみたいなマニュアル本を熟読し、この日の為にとバッチリ練りに練ってきたデートプランのラストを飾るかのごとくやってきたのがそのBARだった…ってな感じ。 ところがその “さんぴん侍” 野郎は、まずカウンターに座るや否や、「すいません、メニューありますか?」と、まるで “新婚さんいらっしゃい” の楽屋にいる三枝に向かって「すいません、今日、椅子からズッコケます?」ってな事を聞くのと同じようなうれし恥ずかし系のメルヘンジャブをかましやがった。当然のごとく「…メニューは御座いませんが、お好みに合わせて…」といったしなくてもいい説明をされる始末。その時点で、俺の「聞き耳を立ててみましょうかbyアヴァンティ」度数はMAXを超えていたにも関らず、その“平社員・島耕作” 野郎は、店内に流れている心地よいジャスに酔いしれるかのごとく、目を閉じながら何かを納得したかの様に、「ウンウン」と頷いてやんの! 俺は思わず、目の前にあったウイスキーグラスを「大将!養命酒おかわり!」とバーテンダーに差し出そうかという恐ろしい衝動をなんとか踏みとどまったが、更にその “すみれセプテンバーラブ” 野郎は、何やら感慨に浸ったような目線で明後日の方向を眺めつつ、更に追い討ちのテポドンを降下して来やがった!!! 「これ知ってる?俺の好きなマイルス!…ジャズはマイルスに始まりマイルスに終わるんだよ…。」 ……3〜!2〜!1〜!着火〜! 「GQ〜!行きまあああああああああす!」 ぬぁぬぃぐぁ〜マイルスだぁ〜?ウイルスみたいなツラしやがってからに!俺は一斗缶を手渡されたアジャ・コングのごとく「おいおいおい、折角の亜熱帯注意報発令中のところ悪いけどさ、今、“マイルス”って言ったよな?たしかに言ったよな?でもさ、俺の右脳が正常ならば、この “ピアノ” の音色はマッコイ・ タイナーなんだけど?」と突っ込んだ訳だ! そしたらさ、こっからがおっかなビックリなんだけど、その “マジで恋する5秒前” 野郎ときたら、明らかに真夏の動物園の白熊の様に怪訝そうな顔して「……し、知ってるけど!それが何か!」と逆ギレチックにのたまいやがったあああ! じゃテメエ〜! “マイルス” って単語はどこのボタン押せば出てくんだよこの全自動食器洗い機があああ!そんなあり得ない奴の反撃に思わず「のおおおおおお〜!」という雄たけびと共に映画『プラトーン』でウイリム・デフォーがやられるシーンのポーズを取ろうかとしている俺を、横でゲラゲラ笑う連れのダチを更に楽しませるべく、俺vs “君に胸キュン”野郎のJAZZバトルがキックオフ! 真性カントリー娘そっちのけで、繰り広げられた “朝まで生マイルス” のおかげで、奴にとってはデートもクソも無くなっていた事は言うまでもない…。ってかね、俺はとにかく “知ったかぶり” しなくても、その娘はJAZZなんぞに興味ないし、何故、“大人=BAR=JAZZ=カッチョイイ” 的な捉え方するんだって思ったんですよね〜。カッコツケて知ったかぶりするのもいいけど、もちょっと調べとかナイト、あまりにもかたじけナイトになっちゃうし、ときめきトゥナイトも来やしね〜っつ〜の。 ってな感じで、今日のテーマはJAZZ!っつ〜事で、監督・製作をクリント・イーストウッドが担当したジャズ映画『BIRD』をご紹介しちゃいます。 ジャズミュージシャンであるチャーリー(フォレスト・ウィッテカー)は、仕事に行き詰まり精神的に追い詰められ、家庭に帰れば妻に当り散らすといった荒れた生活の果てに、ついに精神病棟に入院させられてしまう。治療費を捻出する為に、彼の妻は更に苦悩する日々を送ることになるが… まずいきなり否定的な話になるんだけど、イーストウッドは無類のジャズ好きで有名だし、もちろんこの作品もそんな彼の趣味思考が大きく反映している事は間違いない。それにチャーリー・パーカーも実際に彼が大好きだったアーティストなんだろうって思うんだけど… だったらさ、だったらなんでそのチャーリー・パーカー役がフォレスト・ウィッテカーなんだろう?って思ってしまうんですよお!実在した人物の伝記物といえば、当然のごとく少しでも容姿が似てる役者が演じるってのはお約束じゃないですか。そこいくとこのフォレスト・ウィッテカーはチャーリー・パーカーにはまるっきし似ていないんだもんよおおお…。 随分と持病である潰瘍も悪化し、家庭内でも揉め事が頻繁になりはじめた晩年初期から物語が始まる為、かなりブルーなタッチになっている。その為に、チャーリー・パーカーという人物を知らない人達にとっては、彼がジャズの歴史の中にどのような功績を残し、どの様に今尚人々にリスペクトされているかといった部分が、イマイチ伝わり辛いというか、極端に言えば “よくある墜ちたミュージシャンの結末” 的な雰囲気すら漂っている気がする。俺的に言えば、もっとチャーリー・パーカーという人物は色んな意味でハチャメチャであり、ある一部分を個人的な嗜好でハショって物語にするってのはかなり難しいって事なんですよね。 もちろん、作品自体は “回想” といった感じで、彼がジャズクラブに飛び入りし、開花〜恋愛〜拒否〜錯誤〜南下〜葛藤〜汚染〜堕落といったキーワードが現行のストーリーの中に織り交ぜられ展開するんだけど…ん〜、訳わからなくなるというかなんというか(笑)、とてもスムーズとは言えないというか。簡単に言えば、F・ウイテッカーは素晴らしい!けど、C・イーストウッドはやっぱあくまで “役者” だ!ってな感じかな(笑)。『MALCOLM X』の3時間半はあっという間だったが、この作品の2時間半ってのはなんとも長〜く、もっと言えば退屈にすら感じたのが残念でならない。スパイク、怒ってたらしいもんね〜この作品(笑) なぜなら、チャーリー・パーカーは俺も個人的に大好きなミュージシャンだから…。 父親はミュージシャンだったんだけど、決して音楽的才能に優れていた訳ではなかった彼が、地元であるカンザスがジャズのメッカだった事や、自分の才能のレベルを自覚・認識することでしこたま練習や勉強に励んだ結果の15歳プロデビュー。この頃、練習の虫と化していた彼を例えて『ヤード・バード』というあだ名が誕生したんですね。『ビー・バップの父』と呼ばれる彼。ビー・バップというジャズがどんなものなのか…それはきっと“HIPHOP”という音楽が生まれるにあたって必要だった独創性や個性、表現力や遊び心といったものを、HIPHOPよりももっと早い時期におっ始めていた音楽なんじゃないかなと思いますよ。 ちなみに冒頭で述べた“島耕作&カントリー娘”なんだけど、彼らが帰った後、「気持ちは解るけどアレは無いよな〜」みたいな話で俺とダチ、そして俺らなんかよりも何倍もJAZZに詳しいバーテンダー3人は大盛り上がりしちゃいましたとさ。 テーマ:ブラックムービー(黒人映画) - ジャンル:映画