その昔、“エア・マックス狩り” なんつ~物騒な言葉が世間を賑わした事、覚えてます?
メタメタ人気が出たNIKEのスニーカー“AIR MAX” を履いてる奴を襲い、ソレを強奪するってな事件が至る所で勃発したってアレです。なんだかノリ的に “ビ-バップハイスクール” の “ボンタン狩り” みたいだな~なんて思ってましたが(笑)。俺のダチにも専門学校時代、靴箱に置くのを恐れ、教室まで持って来てたヤツいたんですが、そいつは野郎のクセに24cmというミニモニであるうえに、至るトコロで小型爆弾が炸裂したような穴があいてる “ボロマックス” なんぞ誰が盗むか!と皆につっこまれた訳だ!もちろんそんな暴挙を俺達 “チーム・桃白白(タオパイパイ)” が見過ごす筈もなく、そのボロマックスのシューレースを蛍光ピンクに塗装される、通称 “ぺんてるペイントマーカー・イリュージョン” という攻撃を受けるハメになったのは言うまでもない…
とまぁ、それほど流行しているスニーカーを “所持” するという事が若者の間でステイタスとなり、各メーカーも様々なタイプのモデルを次々に発売していく訳ですが、今回ご紹介する作品は、HIPHOPという文化の中、重要なアイコンとして存在する “スニーカー” にスポットを当てたドキュメンタリー映画『JUST FOR KICKS』でっせ!

HIPHOPの様にストリートから発生し、基本的なポリシーや方向性が当時の “メインストリーム” とは無縁だった音楽・文化ってのは、様々な利権などが絡み、間違った方向でのメジャー化に対し、モノホンのプレイヤー達は指摘・警告を散々繰り返し唱えてきた。実際、今では毎日どこからでも聞こえてくるRAP MUSICは、俺らからすれば「おいおい…」ってな感じのシロモノも少なくない。時代の変化…といった言葉では片付けられない問題なんだろうが、ことスニーカーという文化に対してはある意味そういった部分が絡んでいようと、HIPHOPへの直接的メリットは計り知れないと思うんです。それは、あくまで “ギア” は “サポートアイテム” としてHIPHOPに様々な潤いを与えてきたと思うし、又、HIPHOPより前へ前へというスタンスではなく、強力なボランチとして歴史を共に歩んできた大切なパートナーと言えるんじゃないかな。
スニーカーを始め、Tシャツやデニムなんてファッションアイテムは “武装” の一部分だと思うけど、HIPHOPというカルチャーに対して、どんだけ深く精通出来るか、どんだけ長く継続出来るかといった真の部分は、結局個人の “センス” や “プライド” の問題であり、要は、誰にでも手に入り、誰でも履いてるスニーカーも、履く人間のオーラや力量で “説得力” や “表現力” ってのも変わってくると思う。
俺が生涯最初に買ったスニーカーは、コンバースだったな~。しかも赤!。そうそう、小学校4年の時に見に行った『ブレイクダンス』の中で、ターボことブーガルシュリンプが履いてたんだよ。んで次の日曜、まるで悪徳大名が散々スケ&カクコンビにシバき倒された後、へへ~っと平謝りするかのごとく、親に頼み込んで速攻で買ってもらったんだわさ。ところがよ、次の日の月曜、早速学校へ履いて行ったはいいが、俺と一緒に映画を見に行った他の3人が全員履いて来てんでやんの(笑)。でもその中の1人は、よ~く見ると “コンバース” ではなく、“ユニバース”ってバッタもんだった…(笑)。

中学に入ると、ある日クラスの靴箱に俺のと同じRUN DMCモデルの “ウルトラスター” が置いてあり、しかもそれが “ジョリ子” というアダ名の女子が所有している事が判明してさ、激しく彼女に「そもそもお前はRUN DMCってモンを解って履いてんのかよおお?」なんて全く理不尽かつ意味不明な取調べを決行し、6分後に嗚咽して号泣させるという “靴箱門外の変” という事件を起こした思い出もある訳だ。
実際、初期にブレイカー達が好んだのはPUMAだったんだけど、俺らが一番ガンガン踊ってた時はもちのろんでAJ全盛期!でも個人的には初期のAIR MAXの方がカッコよくて踊りやすかったのを思い出します。ま、AJは元々バスケットシューズな訳で、クラブのフロアはともかく、アスファルトの上で激しくMOVEしたりしてるとガタが来るのも早い訳で、俺はAJⅥを結局3足買いましたよ(笑)。当時は「俺のはナンバー入りのレアモデルじゃ!」だの、「俺のはオリンピックモデルだ!」じゃの、「俺は26.5cmなんだけど25.5cmを無理矢理履いてるんじゃ!」だの、「俺は新田恵理よりはむしろ山本スーザン久美子がキテる!」だの、皆がそれぞれスニーカー自慢を激しく繰り広げていたよな~。
もちろん、そんな事をムキになって主張し合う連中は、皆HIPHOPジャンキーだった訳ですわ(笑)。この作品にも著名なアーティストが多数出演し、自分がいかに “スニーカーLOVE” なのか!みたいな事や、シーンにおいての位置づけみたいなものを熱っぽく語ってるんですが、どんなに高級なスーツをキメこもうが、どんなにブリンブリンなラグジュアリーカーに乗ろうが、彼らの足元にはいつもスニーカーがある。それが、金とイメージに犯されたHIPHOPシーンの中で、唯一このカルチャーが “ストリート生まれ、ストリート育ち” である事を証明してくれている様に思う…。
テーマ:ブラックムービー(黒人映画) - ジャンル:映画
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